和歌と俳句

松本たかし

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をりをりに沼輝けばまた

道欠けて淵を見せゐる紅葉かな

濃紅葉をさしはさみけり藪の家

唯の野に唯の森あり秋新た

あたたかき茶を秋雨の庭に捨つ

暑にまけて残暑にまけて萩の花

秋の風大萩叢の一端に

砂丘行き秋燕を見しばかりなり

柿紅葉地に敷き天に赤し

立出でて遠里小野の柿日和

籬より竿出し置けば鯊かかる

山山の葛咲き了り秋日和

門田なるの日和ここ暫し

我宿の内も外もなき野菊

はや敷きし秋の落葉や森の中

労咳に利く薬無し秋昼寝

秋天天守閣より樋下る

城聳え空濠深く鹿の居り

新涼の荒も好もしの宿

古都を守る弓矢八幡野分吹く

雲一つ秋天深く上りゆく

法師蝉聞き寝の庫裡のひろびろと

漕ぐ舟を廻せば銀河まはるなり

芋蟲の道を渡れり芋の秋

秋草の峠に見しや馬籠宿