遠萩にただよふ紅や雨の中
書を買ひて暫く貧し蟲の秋
十六夜のかかるまどゐの又ありや
生ふるまま芒の庭となし置きぬ
鳥渡り行人仰ぐ山の町
濃紅葉の中深くある青さかな
子規忌すみあと話しゐる萩の雨
懸崖に色鳥こぼれかかりたる
簗打つて山河引き緊む秋の風
我が鳥屋と恵那山の間の虚空かな
渡殿の左右の秋雨降りつのり
物音の港の上の月の寺
薪を割る音木深しや露のやど
秋簾木の間に吊りて野点かな
又しても家路まどへる夜霧かな
鉄塔の一脚に触れ蛍草
町筋に夜寒晴して榛名山
簗掛けて高鳴る水や薄紅葉
虚空より妙義が覗く簗の秋
妙義嶺の傾倒し来る簗を守る
月明の中空にあり妙義町
秋晴や相許しゐる岩と波
星消えて空快晴や谷紅葉
鳳来寺祭りの群集紅葉冷え
天龍に沿うて霧たつ盆地の夜