和歌と俳句

十六夜 いざよい

定家
淡路島秋なき花をかざしもて出づるもおそしいざよひのつき

いざよひもまださらしなの郡哉 芭蕉

いざよひのいづれか今朝に残る菊 芭蕉

十六夜の月を見はやせ残る菊 芭蕉

やすやすと出ていざよふ月の雲 芭蕉

十六夜や海老煎る程の宵の闇 芭蕉

十六夜はわづかに闇の初哉 芭蕉

十六夜の闇をこぼすや芋の露 千代女

芋よりも名はさゝげにぞ十六夜 也有

十六夜や足して詠る星ひとつ 也有

十六夜の落るところや須磨の波 蕪村

十六夜やくじら来そめし熊野浦 蕪村

中天をいざよひの月の出かけ哉 暁台

十六夜や闇かと見れば花すゝき 青蘿

いざよひや芭蕉の上は皆月夜 青蘿

十六夜の山はかはるや月の道 子規

十六夜の闇の底なり荘園寺 子規

社を出れば十六宵の月上りけり 子規

十六夜のだしぬけ雨に降られけり 鬼城

十六夜の寒さや雲もなつかしき 水巴

十六夜や追炊やめて梨の味 水巴

十六夜の月も待つなる母子かな 虚子

十六夜の雲深ければ五位わたる 青邨

十六夜や石にたぐひて亀の甲 草城

十六夜やすいすいとして竹の幹 草城

十六夜の月見そなはす御仏 みどり女

十六夜のきのふともなく照しけり 青畝

十六夜の月の面を照らすもの 夜半

いざよひの薄雲情あるごとく 麦南

十六夜の雲霧宙によもすがら 石鼎

いましがた九時をうちけり十六夜 万太郎

月の名をいざよひと呼びなほ白し しづの女

十六夜の鋒鋩薄き雲間かな 茅舎

いざよひの紺地金泥雲の閧ノ 蛇笏

十六夜の松はなやぎて低きかな 青邨