萩愛でてそぞろ歩きす松の間
もてなしの女あるじや萩の花
母と娘の清らに住めり萩の宿
千二百七十歩なり露の橋
月浴びて玉崩れをる噴井かな
蜻蛉のさらさら流れ止まらず
秋の蚊の居りてけはしき寺法かな
秋雨のどつと寒しや山の町
山川の斯るところに下り簗
山々の紅葉しそめぬ下り簗
廊下行く手燭に風や砧聞く
稲刈りて道の遠さや清涼里
崖下や打重なりて紅葉茶屋
行秋や川をはさみて異国町
墓生きて我を迎へぬ久しぶり
一人居の廻り燈籠に灯を入れぬ
提げて行く廻り燈籠を見舞かな
避暑人のへりたる濱の花火かな
花火やや飽きた空の眺められ
我声の吹き飛び聞ゆ野分かな
野分跡倒れし鶏頭皆起す
父母の夜長くおはし給ふらん
露葎老のかんばせうつるやと
其中に金鈴をふる蟲一つ
十六夜の月も待つなる母嫁かな
いちじくのまことしやかに一葉かな
大江の両岸の蘆刈るとかや