牧水
小鉢より 庭にうつせし 糸萩の 伸びいそぎつつ 今は花咲けり
牧水
庭せまく 小草茂りつ とりわけて 露しとどなる 糸萩の花
萩の中に橋一枚の古さかな 喜舟
白萩に堅く戸さすや夫の留守 かな女
独りごちて萩をこし居る母老ひし かな女
晶子
母となり なほなつかしむ 千代紙の たぐひと見ゆる 紅萩の花
萩散るや掃き拡げたる潦 泊雲
北嵯峨や萩より抜けて松の幹 泊雲
土の皺に流れたまりて萩の花 泊雲
淋しさや筒よりぬけし萩にこそ みどり女
きのふ古し遺筆に活けてこぼれ萩 水巴
小芝かけて萩こぼれたる山路かな 泊雲
白萩の枝をながれて咲きそめし 青畝
風折々さやける萩の花明り 花蓑
かよひ路にさきすがれたる野萩かな 蛇笏
晶子
雲さわぐ 裾野が原に 萩の花 唐紙の紅の色したる立つ
もてなしの女あるじや萩の花 虚子
母と娘の清らに住めり萩の宿 虚子
赤彦
わが庭の 敷石のうへに かぶされる 秋萩の花 咲きそめにけり
赤彦
わが馬の 歩み自ら 止まりて 野中の萩の 花喰ひにけり
しだり萩或は松のしげみより 風生
雨風や最も萩をいたましげ 虚子
雨の萩六時といへば暮るゝかな 万太郎
夕月やうちかぶり剪る萩白し 草城
萩の花夜目のほのかにこぼれけり 草城
白萩の雨をこぼして束ねけり 久女