燈籠や海すこしみえ切通し
秋の夜や雨ともならず草津橋
八木ぶしのすたれそめたる夜長かな
長き夜の膳ごしらへや盆二つ
秋刀魚焼く烟の雨となりにけり
夕空に月あるなしや落し水
踏切のあきし往来や秋の暮
露霜や有明の月とみるまでに
秋風や水に落ちたる空のいろ
いたづらに蓼ののびたり秋の風
はかなさは月のひかりのすでに秋
走馬燈みたりがおもひめぐりけり
ひぐらしに燈火はやき一と間かな
うちかへす綿の匂ひや秋の蝉
とりとめしいのち露けきおもひかな
うち晴れて淋しさみずや獺祭忌
墓原のまばゆく晴れし蜻蛉かな
硝子戸に風ふきつのる蜻蛉かな
かまくらをいまうちこむや秋の蝉
新涼の身にそふ灯かげありにけり
新涼の髪結ひやうや姉いもと
雨の萩六時といへば暮るゝかな
空をみてあれど淋しや秋の暮
みえそめし灯かげいくつや秋の暮
咲きわるゝ菊にみいでし夜寒かな