三日月や塀のはづれの草の門
茶畑の家で灯す秋の暮
芝居みしきのふなつかし秋の暮
霧にさす傘の雨なり秋の暮
白菊に幟の多く浅黄かな
門前の床屋の月と踊かな
深川の五厘渡しと花火かな
玄関につけてある灯の夜長かな
日曜の空とコスモスと晴れにけり
仰向けに寝て冷かな我身かな
汐留の名が秋晴てゐたりけり
秋天の下芋坂を下りけり
秋の暮上野の奥の谷中かな
水見舞言問までかへり来りけり
門内に月ひそめける芒かな
糸瓜忌や道灌山のけさの空
猫八のなくこほろぎや冬隣
うら枯や松戸でくひしうなぎめし
桟取も筏も淋し末枯るゝ
仲見世のこの晴さびし水見舞い
雨やまず半ときほどや墓詣
たぎりたつ湯にさす水の夜長かな
露の中飛行船今あがりけり
秋風や井戸をいでたる棹の丈
高崎へ何里磯部の夜寒かな
温泉の町の磧に尽くる夜寒かな