和歌と俳句

墓参り

家は皆杖に白髪の墓参り 芭蕉

夕月や涼がてらの墓参 一茶

もつ花におつるなみだや墓まゐり 蛇笏

長崎や三味線提げて墓参 子規

石ころで花いけ打や墓参 子規

櫨寺の墓にも参るゆかりかな 碧梧桐

墓拜む人の後ろを通りけり 虚子

業を繼ぐ我に恥無し墓参 虚子

花提げて先生の墓や突当り 虚子

都なる祖先の墓に参りけり 虚子

國にゐて家守る兄と墓参 虚子

谷に下りて先師の墓に参りけり 虚子

しづかなる此山蔭や墓詣り 虚子

墓参り先祖の墓の小ささよ 虚子

深川の小さき寺や墓参 万太郎

追分に人とわかれて墓参 万太郎

憎みしが畏敬の念に展墓かな 橙黄子

赤土よごれ墓おほけなく 碧梧桐

本堂よりまはりて参る墓 碧梧桐

父の墓の前そろへる兄弟 碧梧桐

草ぬいて早や暮るゝ日の墓参かな 碧梧桐

墓生きて我を迎へぬ久しぶり 虚子

墓起す一念草をむしるなり 亞浪

松風の中を行きけり墓参人 龍之介

何となく墓をめぐるや墓参人 龍之介

雨やまず半ときほどや墓詣 万太郎

ふるさとの山々晴れし墓参かな 櫻坡子

青空に消ゆる頭痛や墓参 喜舟

久方の墓参の俥列らなれり 橙黄子

長旅の疲れごころの展墓かな 橙黄子

山寺の釣瓶ひた洩る墓参かな 淡路女

墓参人鳴きやむ蝉の樹を仰ぎ 爽雨

大風に草踏みつけて墓参かな 月二郎

ひしめきてただひと時の墓参かな 蛇笏

掃苔や餓鬼が手かけて吸へる桶 誓子