温公の岩越す音や落し水
御所柿にたのまれ皃のかがし哉
稲刈て化をあらはすかゞしかな
花鳥の彩色のこす案山子かな
鹿寒し角も身に添ふ枯木哉
秋たつや何におどろく陰陽師
貧乏に追つかれけりけさの秋
萍のさそひ合せてをどり哉
ひたと犬の鳴町過て踊かな
唐黍のおどろきやすし秋の風
いな妻や八丈かけてきくた摺
名月や雨を溜たる池のうえ
名月やうさぎのわたる諏訪の海
さくらさへ紅葉しにけり鹿の声
にしき木を立ぬ垣根や番椒
花すすきひと夜はなびけ武蔵坊
白菊や呉山の雪を笠の下
二本づつ菊まいらする仏達
稚子の寺なつかしむいてう哉
銀杏踏でしづかに児の下山哉
江渺々として釣の糸吹あきの風
かなしさや釣の糸ふく秋の風
秋風や酒肆に詩うたふ漁者樵者