秋立や素湯香しき施薬院
恋さまざま願の糸も白きより
鴫立て秋天ひききながめ哉
魂祭王孫いまだ帰り来ず
つと入や納戸の暖簾ゆかしさよ
つと入やしる人に逢ふ拍子ぬけ
相阿弥の宵寝起すや大文字
地蔵会やちか道を行祭客
錦木の門をめぐりて踊かな
八朔もとかく過ぎ行くおどり哉
松明消て海少し見ゆる花野かな
市人の物うちかたる露の中
追風に薄刈とる翁かな
草の戸の心にそまぬ糸瓜かな
花火せよ淀の御茶屋の夕月夜
花火見えて湊がましき家百戸
三径の十歩に尽きて蓼の花
猿三声我も又月に泣夜かな
獺の月になく音や崩れ簗
霧晴て高砂の町まのあたり
花守は野守に劣るけふの月
名月や神泉苑の魚躍る
月の宴秋津が声の高きかな
月見ればなみだに砕く千々の玉