兼盛
みつぎもの たえずそなふる 東路の 瀬田の長橋 音もとどろに
新古今集・雑歌 匡房
真木の板も苔むすばかりなりにけり後世経ぬらむ瀬田の長橋
顕季
ひき渡る 瀬田の長橋 空はれて 隈なく見ゆる 望月の駒
源顕仲
あさつまや はたさす駒に 声たてて 瀬田の長橋 ひきわたすなり
俊恵
旅人や 瀬田の長橋 辿るらむ ひきわたしても 見ゆる霞か
定家
夜をこめて朝たつ霧のひまひまにたえだえ見ゆる勢田の長橋
俊成
朝霧はせたのながはしこめてけり往き来の駒の音ばかりして
俊成
東路や瀬田の長橋むかしより幾千代へよと渡しそめけむ
続後撰集・恋 橘俊綱朝臣
わするなよ せたの長橋 ながらへて なほ世の中に すみもわたらば
芭蕉
獺の祭見て来よ瀬田のおく
芭蕉
ほたる見や船頭酔ておぼつかな
鬼貫
夏の日を事とも瀬田の水の色
其角
こがらしや勢田の小橋の塵も渦
丈草
幾人かしぐれかけぬく勢田の橋
許六
瀬田の橋上り下りや初あらし
支考
瀬田の月又来る筈に定りぬ
野坡
勢田の雪湖ならぬ田子の頬かぶり