和歌と俳句

あだしの(徒し野・化野・仇し野)

京都市右京区嵯峨の奥の墓場

源順
あだし野の草むらにのみまじりつるにほひは今やひとに知られむ

源順
おぼつかなあだし野みれば花もなしそらににほふといふやなにぞも

源氏物語・手習
あだし野の風になびくな女郎花われしめゆはん路遠くとも

金葉集・秋 春宮大夫公実
あだし野の 露ふきみだる 秋風に なびきもあへぬ 女郎花かな

俊頼
あだし野はかすみもつらし散りそむる花をぞ風にたち隔てまじ

俊頼
あだし野の萩のすゑこす秋の瀬にこぼるる露や玉川の水

基俊
あだし野の こころもしらぬ 秋風に あはれかたよる をみなへしかな

公能
をみなへし 露のころもを 重ね着て なに化野に たはれ臥すらむ

季通
なによりも はかなきことは 夏の夜の 化野の辺の 旅寝なりけり

千載集・秋 仁和寺法親王道性
虫の音もまれになりゆくあだし野にひとり秋なる月のかげかな

俊恵
しらたまを つつめる萩の 錦をば 誰あだしのに ここらおきけむ

俊恵
つれもなき 人に見せばや をみなへし あだし野の辺に まねくけしきを

西行
誰とてもとまるべきかはあだし野の草の葉ごとにすがる白露

式子内親王
暮るるまでまつべきよかはあだし野の末葉のに嵐たつなり

定家
あだし野の風にみだるる糸すすき来る人なしに何まねくらむ

良経
人の世は思へばなべて化野の蓬がもとの一つ白露

実朝
あだし野の葛のうらふく秋風のめにし見えねばしる人もなし

定家
あだし野のをかやが下葉たがために乱れそめたる暮れを待つらむ


其角
化野や焼玉黍の骨ばかり

野坡
あだし野や錦に眠る平家蟹

青蘿
二十五年今朝あだしのゝ塚の霜

不死男
花寒きわれに鼻なき餓死仏



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