和歌と俳句

式子内親王

最初のページ 前のページ< >次のページ

沖深み釣りするあまの漁火のほのかに見てぞ思ひそめてし

思ふより見しより胸に焚く恋のけふうちつけに燃ゆるとやしる

あはれとはさすがに見るやうちいでし思ふ涙のせめてもらすを

思ひかね浅澤小野に芹つみし袖の朽ち行くほどを見せばや

かりにだにまだ結ばねど人ごとの夏野の草としげきころかな

我が恋は逢ふにもかへすよしなくて命ばかりの絶えや果てなん

假初に伏見の里の夕露のやどりはかへる袂なりけり

浅ましや浅香の沼の花がつみかつ見馴れても袖はぬれけり

我が袖のぬるるばかりは包みしに末摘花はいかさまにせむ

入りしより身をこそ砕け浅からず忍ぶの山の岩のかげ道

年月の恋もうらみもつもりてはきのふにまさる袖の淵かな

常磐木の契やまがふ立田姫しらぬ袂も色変りゆく

ただいまのゆふべの雲を君も見ておなじしぐれや袖にかからむ

たそがれの荻のはかぜにこのごろのとはぬならひをうち忘れつつ