和歌と俳句

広沢の池

西行
やどしもつ月の光の大澤はいかにいづこもひろ澤の池

寂蓮
月清み都の空も雲清て松風払ふ広沢の池

有家
心こそ雲井はるかにあくがれめ眺めも誘ふ広沢の月

良経
広沢の池のおほくの年ふりてなほ月残るあかつきの空

定家
すみきけるあとはひかりに残れども月こそふりね広沢の池

良経
心には見ぬ昔こそ浮かびけれ月にながむる廣澤の池

定家
散る花にみぎはのほかのかげそひて春しも月は広沢の池

家隆
行方なくながむる空も広沢の池の心に澄める月影

良経
広沢の池のみくさを吹き寄せて風よりはるゝなみの月かげ

良経
明け方の波間の月や冴えぬらむそれより氷る広沢の池

雅経
広沢の 池の玉藻に みだれあひて 枯れゆく芦の しのぶもぢずり

いづれゆかん蓮の實持て廣澤へ 素堂

広沢やひとり時雨るる沼太郎 史邦

池の面雲の氷るやあたご山 去来

水かれて池のひづみや後の月 蕪村