けさよりは あらしふきそふ みよしのの ふるさとさむき 冬や来ぬらむ
しぐれゆく みやまが里の 庵に焚く しばしは曇る この頃の空
ふく風の おともさえゆく 笹の葉に おく初霜の ふかきよの空
うら風に さやぐ難波の たま柏 藻にうづもれぬ 霰ふるなり
たがみそぎ ゆふかけそふる 色なれや 衣たつたの やまの白雪
広沢の 池の玉藻に みだれあひて 枯れゆく芦の しのぶもぢずり
波路ゆく 月になくさの はまちどり ともこそなけれ かげは離れず
水のおもに ねさしとまらぬ うきくさの 澱むばかりに こほるたきつせ
あしにはに 隠れて住みし みづとりの かものあを羽も あらはれにけり
橋姫の まつ夜ふけゆく 川波に 月もいざよふ 瀬々の網代木
みしまゆふ かたにとりかけ さかき葉に ときはかきはに いのる神垣
はしたかの 野守のかがみ よそにやは 見るかげさへに 暮方の空
わすれては 雲かとぞおもふ 雪わけて けぶりたなびく 小野のすみがま
あきをやく 木の葉の色や のこるらむ あらしにたへぬ やどのうづみ火
東路に ありといふなる てまの関 とりとめ難き 年の暮かな
おもへども いはかき沼の ひまをなみ うきみこもりに もらしかねつつ
知る人も なぎさの松の 根をふかみ まだあらはれず 波はかかれど
あふことは なみだの川の はやき瀬に おひぬみるめを なに求むらむ
うしとのみ ゆふ手もたゆく おもひこし こころもいまぞ とくるしたひも
おもかげは なほありあけの 月草に 濡れてうつろふ 袖の朝露