たちかへり またやはよそに いしまゆく 水のしらなみ 袖もせきあへず
かたしきの 袖もわれから あまのかる 藻にすむといふ むしあけのせと
けぶりたつ 富士のたかねの よそにだに たえぬおもひを そらにしれつつ
あはれとも おもはぬ人の おもかげに かずかきわぶる みづからそ憂き
志賀のあまの しほやき衣 なれだにも かわかぬ袖を うらみやはせぬ
年をへて ねざめ夜ふかき 鐘のおとの なみだももろく なるぞ悲しき
しもゆきに さても年ふる そなれ松 こころの色は われぞつれなき
木にもあらず 草にもあらぬ 竹の葉も まがきのほかの ものとやはみる