和歌と俳句

由良

●京都府宮津市由良。 ●紀淡海峡。

古集
妹がため玉を拾ふと紀伊の国の由良の岬にこの日暮らしつ

人麻呂歌集
朝開き漕ぎ出て我れは由良の崎釣りする海人を見て帰り来む

人麻呂歌集
由良の崎潮干にけらし白神の磯の浦廻をあへて漕ぐなり


新古今集・恋 好忠
由良の門を渡る舟人かぢを絶え行くへもしらぬ恋の道かも

清輔
ゆふしほに 由良のとわたる あまを舟 霞のそこに 漕ぎぞいりぬる

新古今集・恋 良経
楫をたえ由良のみなとに寄る舟のたよりも知らぬ沖つしほかぜ

定家
花鳥の匂ひもこゑもさもあらばあれ由良の岬の春のひぐらし

実朝
うちはへて秋は来にけり紀の国やゆらのみさきの海人のうけ縄

新勅撰集・雑歌 よみ人しらず
いもがため たまをひろふと きのくにの ゆらのみさきに このひくらしつ

続後撰集・秋 平茂時朝臣
玉ひろふ 由良のみなとに 照る月の 光をそへて よする白波



由良の嶺に栗田の子らが樵る柴は陸ゆはやらず蜑舟に漕ぐ


由良川は霧飛びわたる曉の山の峽より霧飛びわたる


由良川の霧飛ぶ岸の草村に嫁菜が花はあざやかに見ゆ

万太郎
初汐や由良の湊の呉服店

かな女春風や由良の戸守る松林

草堂
由良の門の冬天浪の音満てり