虚子
綿を干す寂光院を垣間見ぬ
節
あさあさの佛のために伐りにけむ柴苑は淋し花なしにして
利玄
寂光院の尼の頬あかき午后にして日は照り雨の粉ちりにけり
利玄
寂光院の床ふむにつべたみそぞろに見る阿波の内侍のはりぼての像
利玄
お堂出づれば只今の間に日はかくれ雨の粉ちれり大原の峡に
利玄
庵室の障子あけてみれば日はかげり叉日は照るも大原の峡に
虚子
綿を干す寂光院を垣間見ぬ
青邨
ひろひたる寂光院の紅葉かな
秋櫻子
花さむき大原の雨に来てぬれぬ
秋櫻子
苔ぬれてしげき春雨音あらぬ
秋櫻子
わがきくは治承寿永の春の雨か
秋櫻子
若き尼御厨子に春の灯をささぐ
草城
花蔭のしづかに香のきこえけり
蛇笏
旅ここに寂光院は春の寂び
蛇笏
翠黛に雲もあらせず遅ざくら
蛇笏
数珠の手に花種を蒔く尼ぜかな
蛇笏
ひとりねて尼僧のむすぶ春の夢
蛇笏
眼ほそめて春日仰ぐも尼の君
蛇笏
幽情をここに草生の女院像