好忠
与謝の浦に 老の波かず 算へつる あまのしわざと 人も見よとぞ
俊頼
与謝の浦に しま隠れゆく つり舟の ゆくへもしらぬ 恋もするかな
親隆
鶚ゐる 与謝の浦わに 風吹けば さくらかひよる 春のあけぼの
親隆
与謝の海 引くてふ網の 綱手縄 繰るをば人の 心ともがな
清輔
なにとなく 心すみてや いでつらむ 月にさをさす 与謝の浦人
俊恵
与謝の海は かすみへだてて いづかたか ちふねよるてふ おほかたの浦
俊恵
与謝の海に しま漕ぎ出づる 釣舟を またたち隠す 夕霞かな
俊恵
与謝の海の なみまにやどる 月みれば あまのかはべに われや来ぬらむ
鴨長明
もかり舟 漕ぎ出でて見れば 越の海の 霞に消ゆる 与謝の松原
良経
しほかぜの 与謝の浦松 おとさえて 月影よする 沖つ白波
良経
与謝の海の 沖つしほかぜ 浦に吹け まつなりけりと 人にきかせむ
慈円
与謝の浦 まつ風さそふ さよ千鳥 波よりほかに 袖ぬらせとや
雅経
かけてだに たのめぬ波の よるよるを まつもつれなき 与謝の浦風
新勅撰集・恋 殷冨門院大輔
うかりける よさのうらなみ かけてのみ おもふにぬるる そでをみせばや
内藤鳴雪
与謝の海や藍より出でて夏木立
子規
与謝の海かすんで赤き入日哉
節
眞白帆の はらゝに泛ける 與謝の海や 天の橋立 ゆほびかに見ゆ
節
葦交り 嫁菜花さく 與謝の海の 磯過ぎくれば 霧うすらぎぬ
節
與謝の海 なぎさの芒 吹きなびく 秋風寒し 旅の衣に
草堂
与謝の海のくらさよ冬日嶺づたふ
楸邨
何の芽か雀がくれの与謝の海