鶯に花摘の跡たどりけり
春雨の冷ゆれば椿咲きつれば
御命早めしと思ふ花さむし
門院のみぐしにさむき花咲きぬ
初花の岨路を御幸ありしかな
手をかざす花の篝に夜風かな
篝まはる人に祇園の花咲けり
花人のうするゝ方へ篝散る
月の雲枝垂桜の濃くうすく
花風に八阪神社の篝かな
摩利支天の露店の上や春の月
春月のさす古本を漁りけり
春の雲うごかず舟のすゝみけり
春の雁鳴けば見上げし遠野原
春暁の星をうつさず相模灘
熔岩に椿の林途切れけり
白魚の夢に大船うごきけり
凧揚げの焼津より乗る婆子かな
春昼の餅にも飽きて眠くなる
松伐つて積む家近き遅日かな
温室のまはりは遅日の子等あそぶ
夕風の見えたり土堤の草萌に
春の旅三河の御田に暮るゝかな