長谷川かな女
淡雪に母臨終の静かなる
子雀に楓の花の降る日かな
嗅ぎよりぬ亡母が挿木のつゝじの芽
留守の庭緋椿咲くは華々し
人麿忌像うしなひし庵の戸に
花木瓜や土をおろがむ仏達
春暁の障子に藤のうつりけり
朧夜の人のあとより歩きけり
春惜しむ人にまじりし一人かな
大いなる月の導く御忌詣り
三人にとゞく一籠さくら餅
こでまりに上衣の彩をうつし行く
春蘭にうづまく髪を臥せしかな
旅好きの人なし萌ゆる草の日に
下萌に疑ふ生死悲しけれ
チユリツプ影もつくらず開きけり
起きて来る草花の苗茄子の苗
日輪をかくして春の空ひろし
春風や由良の戸守る松林
懐かしや二度逢ふ人に水温む
桜鯛絵島を見よと誘はれて
芽銀杏に三舛の紋の女形