曾禰好忠
蚊遣火の小夜ふけがたの下こがれ苦しやわが身人知れずのみ
曾禰好忠
由良のとをわたる舟人かぢをたえ行方も知らぬ恋のみちかな
權中納言師時
追風に八重の鹽路を行く舟のほのかにだにもあひ見てしがな
摂政太政大臣良経
かぢをたえ由良の湊による舟のたよりも知らぬ沖つしほ風
式子内親王
しるべせよ跡なきなみに漕ぐ舟の行方も知らぬ八重のしほ風
權中納言長方
紀の國や由良の湊に拾ふてぬたまさかにだにあひ見てしがな
權中納言師俊
つれもなき人の心のうきにはふ葦の下根のねをこそはなけ
摂政太政大臣良経
難波人いかなる江にか朽ちはてむ逢ふことなみにみをつくしつつ
皇太后宮大夫俊成
蜑のかるみるめをなみにまがへつつ名草の濱を尋ねわびぬる
相模
逢ふまでのみるめ刈るべき方ぞなきまだ波馴れぬ磯のあま人
業平朝臣
みるめ刈るかたやいづくぞ棹さしてわれに教へよ海人の釣舟