わが心いかにせよとか山吹のうつろふ花にあらしたつらん
たちかへりみれどもあかず山吹の花ちる岸の春の川浪
をのづからあはれとも見よ春ふかみ散りゐる岸の山吹の花
散り残る岸の山吹はるふかみこの一枝をあはれといはなん
たまもかる井手の川風ふきにけりみなはにうかぶ山吹の花
新勅撰集
たまもかる井手のしがらみ春かけて咲くやかはせの山吹の花
ふるさとの池の藤波たれうへて昔わすれぬかたみなるらん
続後撰集・春
いとはやもくれぬる春か我が宿の池の藤波うつろはぬまに
きかざりきやよひの山のほととぎす春くははれる年はありしかど
春ふかみあらしもいたくふく宿は散り残るべき花もなきかな
ながめこし花もむなしく散りはててはかなく春の暮れにけるかな
いづかたにゆきかくるらむ春霞たちいでて山のはにも見えなで
ゆく春のかたみとおもふを天つ空ありあけの月はかげもたえにき
おしむともこよひあけなばあすよりは花の袂をぬぎやかへてむ