里は荒れぬ志賀の花園そのかみの昔の春やこひしかるらむ
たづねてもたれにかとはむふるさとの花も昔の主ならねば
さくら花ちらまくをしみうちひさすみやぢの人ぞまとゐせりける
新勅撰集
さくら花ちらばおしけむ玉ほこのみちゆきぶりにをりてかざさむ
みちすがら散りかふ花を雪とみてやすらふほどにこの日くらしつ
咲けばかつうつろふ山のさくらばな花のあたりに風なふきそも
春くれど人もすさめぬ山ざくら風のたよりにわれのみぞとふ
さくら花さきちるみれば山里にわれぞおほくの春はへにける
山桜ちらばちらなむをしげなみよしや人みず花のなだてに
花を見むとしもおもはで来しわれぞ深き山路に日数へにける
山風のさくらふきまく音すなり吉野の滝の岩もとどろに
春くればいとかのやまの山ざくら風にみだれて花ぞちりける
咲きにけりながらの山のさくらばな風にしられて春もすぎなん
み吉野のやましたかげの桜花さきてたてりと風にしらすな
桜花うつろふ時はみ吉野のやました風に雪ぞふりける
風ふけば花は雪とぞ散りまがふ吉野の山は春やなからむ
山ふかみたづねてきつる木のもとに雪と見るまで花ぞちりける
春のきて雪はきえにし木のもとに白くも花のちりつもるかな
山ざくらいまはのころの花ゆえにゆふべの雨の露ぞこぼるる