和歌と俳句

山口素堂

池に鵞なし假名書習ふ柳哉

名もしらぬ小草花咲野菊哉

うますぎぬこ ゝろや月の十三夜

月九部あれの ゝ蕎麥よ花一つ

冬瓜におもふ事かく月み

むくの木のむく鳥ならし月と我

蘇鐵にはやどらぬ月の薄かな

月一ツ柳ちり残る木の間より

われつれて我影帰る月夜かな

垣根破るその若竹をかきね哉

おもだかや弓矢たてたる水の花

河骨や終にひらかぬ花盛

暑き日も樅の木間の夕日かな

去年の蔓に朝顔か ゝるかきね哉

我蔓をおのが千引の西瓜かな

人やしる冬至の前のとし忘れ

汐干つ ゞけ今日品川をこゆる人

わすれ艸もしわすれなばゆりの花

西瓜独野分をしらぬ朝かな

いづれゆかん蓮の實持て廣澤

松嶋の松陰にふたり春死む

めでたさや星の一夜も朝顔も

一葉浮て母につげぬるはちす哉

腹中の反古見はけん年のくれ

髭宗祇池に蓮ある心かな