和歌と俳句

山口素堂

枯瓢蚤か茶臼をおふこゝろ

菊にはなれかたはら寒し水仙花

くだら野や無なるところを手向草

像に声あれくち葉の中に帰り花

時雨の身はいは ゞ髭なき宗祇かな

生てあるおもて見せけり葛のしも

七草よ根さへかれめや冬ごもり

歎とて瓠ぞ残る垣の霜

滋賀の花湖の水それながら

大井川しづめて落るつばき

朝霧や嘸朝寐にて柴の庵

草と見て開くふようの命かな

ちからなく菊につ ゝまるばせをかな

伊勢船を招く新樹の透間哉

此名残古郷も遠し時鳥

しぼミても命長しや菊の底

ずつしりと南瓜落て暮淋し

釣上よ蓮のうき葉を藤のつる

枯にけり芭蕉を學ぶ葉廣草

長雨の空吹出せ青嵐

枇杷黄也空ハあやめの花曇り

涅槃会や花も涙をそ ゝぐやと

木の間ゆくかづきにちらし櫻かな

茸狩やひとつ見付しやみのほし

雲半山石をのこしてもみぢけり