岩田涼菟
閉て住ささげの花や八重むぐら
うれしさよ鬼灯ほどに初茄子
箱崎や松のふかみも青あらし
美濃からの文月や先豆の事
秋寒し岩の上から橋はしら
山々や一こぶしづつ秋の雲
かたびらに越の日数や後の月
夕暮はいつもあれども秋の海
唐稈の葉は帯ほどに星祭
人声を風の吹とる花火かな
貴様にはさぞ名月の瀬田泊
籾臼に肩をならべる月見哉
からうすの五条に似たり壁の葛
寐入かね虫歯に響くきぬたかな
あさむつの橋に揃ふや小鷹狩
禰宜らしきあるじや菓子にことし米
青き葉をりんと残して柚味噌哉
鹿の音の呼出す杉のあらしかな
鹿のこゑを迎へに出ばや宇治の里
弓取て額烏帽子や稲すずめ
落鮎のあがきの水やうさか川
鳥どもに見かぎられてや散柳