仙人の珍しからぬ木実かな
蔦の実を馬に喰はすなうつの山
暮わたる空や芭蕉に鐘の音
椽側にさし入る月や蘭の花
蘭の香や袷かかえて椽通り
燃るかと立寄る塚のまんじゆしやげ
身の上を只しほれけり女郎花
名の跡やはなも見せたり鳥甲
ありやうにすはりて青き瓢かな
むかふ日や萱も薄も弁才天
百疋の馬に模様や花すすき
おそろしき鈴鹿もいまや初紅葉
毬栗に関見返るや上路山
人としておやしらずとは冷じや
初鮭や市中を通る浅野川
こがらしの一日吹いて居りにけり
骨髄に通つて清し霜の花
猿飛んで片枝青し雪の松
湯婆から駒の出さうな手つき哉
来かかりて袴ながらや雪まろげ
鴨一羽帯にはさむやとしの市
はち巻を角にむすぶや大根引
羽箒や薬喰して灸催ひ
鬼の豆貴妃が頭痛もなかりけり