静岡市と志太郡の境にある山。
伊勢物語・新古今集・羇旅
駿河なる宇津の山べのうつゝにも夢にも人にあはぬなりけり
新古今集・羇旅 家隆
旅寝する夢路はゆるせ宇都の山関とは聞かずもる人もなし
新古今集・羇旅 定家
みやこにも今や衣をうつの山ゆふ霜はらふ蔦のしたみち
新古今集・羇旅 鴨長明
袖にしも月かかれとは契り置かず涙は知るやうつの山ごえ
俊成
夢路には馴れしやと見るうつつにて宇都の山邊の蔦葺ける庵
寂蓮
越えて来し うつの山路に 這ふ蔦も けふや時雨に 色はつくらむ
良経
なほ通へ宇津の山邊のうつつには絶えにしなかの夢路ばかりを
良経
宇津の山こえし昔の跡ふりて蔦の枯葉に秋風ぞ吹く
良経
忘られず都の夢やおくるらむ月は雲井を宇津の山越え
良経
うつの山 うつつかなしき 道たえて 夢にみやこの 人は忘れず
良経
しげりあふ 蔦も楓も 跡ぞなき うつの山辺は 道ほそくして
良経
逢ふ人も なき夢路より ことづけて うつつかなしき うつの山越え
雅経
ふるさとの たよりとならば ことづてむ 袂にむかふ 宇都の山風
定家
うつの山うつるなかりに嶺の色わきて時雨や思ひそめけむ
実朝
みやこべに夢にもゆかむ便りあらばうつの山かぜ吹きもつたへよ
続後撰集・恋 前中納言定家
さぞなげく 恋をするかの うつの山 うつつの夢の またとみえねば
山芋も茂りてくらし宇津の山 許六
蔦の実を馬に喰はすなうつの山 涼菟
うつの山一日春と別れたり 暁台
曙覧
艸まくらつかれて寐たる宇都の山うつ雨くるし菅の古がさ
鶯や団子くひ行くうつの山 子規
五月雨や牛に乗つたる宇都の山 子規
乗懸に九月尽きたり宇都の山 子規
枯蔦や石につなづく宇都の山 子規