和歌と俳句

東慶寺

愚痴無智のあま酒造る松が岡 蕪村

炉に火なく時計止れる一間あり たかし

初蝶の燦爛としてやすらへり 青邨

初蝶の紋ぞ仏の燦爛を 青邨

月を待つ人皆ゆるく歩きをり 虚子

蒼海の色尚存す目刺かな 虚子

春雨のくらくなりゆき極まりぬ 虚子

何某の院のあととや花菖蒲 虚子

本尊に茶を供ずれば秋蚊出る 虚子

牡丹哀しもとより草の深ければ 万太郎

いつのまに咲いてしまへる牡丹かな 万太郎

牡丹の芽ほぐれ陶榻あたたかく 青邨

僧院は牡丹の客に苔厚し 秋櫻子

広縁を拭きて下照る牡丹あり 秋櫻子