和歌と俳句

松本たかし

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霜除に覗き窓あり寒牡丹

微禄しつつ敢えて驕奢や寒牡丹

霜除の裾浮みをり敷松葉

身じろげばたつ微塵あり日向ぼこ

梅活けて風邪の衾の濃紫

枯萩の中にこぼれて蝶凍てぬ

冬浜や藻焼煙の元濃ゆく

籠掛けて何か干しある枯木かな

鎌倉はすぐ寝しづまり寒念仏

風邪熱の冷めて夜深し水仙花

落葉掃く音山にあり移りゆく

大杉の頂に鵯根に焚火

銀杏散りひろごる中に藪もあり

炉に火なく時計止まれる一間あり

臘八の聴衆まばらや大伽藍

きびきびと応ふる寒に入りにけり

寒木瓜のゆるみほほ笑む蕾かな

通ひ路の一礼し行く神も留守

開かれし炉あり炉辺に何もなし

炉開けば遙かに春意あるに似たり

目を細むあまり枯枝の細かさに

相寄りて眠れる山の谷の坊

炭竃に塗込めし火や山眠る

炭竃に日行き月行く峡の空

炭屑を踏む音淋し竃ほとり