消え消えの枯蔓の実の真赤かな
ゆるやかに落葉降る日を愛でにけり
紐のごとこんぐらがりし枯枝かな
日を追うて歩む月あり冬の空
青天にただよふ蔓の枯れにけり
枯蔓の蔓先を見る断れて無し
歳時記に聞きて冬至のはかりごと
水鳥の争ひ搏ちし羽音かな
門川の冰りたるより音もなし
あの雲が飛ばす雪かや枯木原
橋の燈の雪をまとひて灯りけり
侘助の莟の先に止まる雪
飲食に汚れし爐邊や草の宿
山深し朴の落葉に目欹つ
ふはふはと朴の落葉や山日和
朴の葉の大きくぞなり落ち来る
朴の葉のつつ立ちてすみやかに落つ
枯木中居りたる雲のなくなりし
橙に天照る日ある避寒かな
橙の木の間に彳ちつ避寒人
杵肩に餅搗きに行く畦伝ひ
餅搗の水呑みこぼすあぎとかな
山裾に立ちもたれたる日向ぼこ
師へ父へ歳暮まゐらす山の薯