寒紅を差してやるとて顎に手を
風除の椿林や避寒宿
鴨を得て鴨雑炊の今宵かな
白々と脆き岩なり枯芒
山裾に立もたれたる日向ぼこ
舟着けば人登りくる冬堤
小春日や耕牛耕馬孜々として
耕人に山の落葉の飛ぶ日かな
離れんとしてあたりをり焚火かな
境内の冬日を追て遊ぶ子等
寒牡丹挿して淋しさ忘るるか
鎌倉の紅葉も菊も冬に入り
茶の花や古りし御堂に庫裡新た
色菊の相もつれつつ枯れそめし
白猫の綿の如きが枯菊に
家家の枯菊捨てぬ滑川
冬浜に直ぐある町や坂の下
枯芝の黄に松濃ゆし避寒宿
冬に入る温泉町温泉町や上州路
枯るるは枯れ青きは青き草小春
障子あけし其処に屏風の裏があり
我が凭りし銅の火鉢や菊を彫る
萱枯れし山がふさがり総玻璃戸
鵯の声の長さや冬の山
身辺や年暮れんとす些事大事