和歌と俳句

建長寺

月にゆかば鐘に夜明む建長寺 暁台

陽炎となるやへり行く古柱 子規

鐘つけば銀杏ちるなり建長寺 漱石

松籟やしぐれぐもりの甃 波郷

寿福寺

寿福寺はおくつきどころ実朝忌 虚子

墓参して寿福禅寺のにあり 虚子

掃き出す萩と芒の間の塵 虚子

木の実落つ実朝以下の墓無数 青畝

寿福寺の夕鶯のものさびし 立子

円応寺

閻王の眉は発止と逆立てり 虚子

明月院

山の芋掘りためてあり草紅葉 虚子

山吹の道来て院の濃山吹 秋櫻子

呆けたる芒が囲む山畑 たかし

山畑の空になりたる柿一本 たかし

山畑に何もなくなる冬日かな たかし

山門に雪のごとくに雪柳 青邨

院の址何にもとめむ冬すみれ 秋櫻子

畑さへや荒れゆくまゝに白牡丹 秋櫻子

花みだれ暮春却て人訪はず 秋櫻子

杉本寺

鎌倉に杉本寺や著莪の花 尾崎迷堂

や杉本寺のあさゆふべ たかし

古絵馬に四万六千日来る たかし

四萬六千日の門前の蚊火の宿 たかし

晩涼の杉本寺は鐘の撞かず たかし

の指さされたる香かな 波郷