風強き玻璃戸の外の春の山
土筆摘んで立ち上りわが影法師
庭前の春の山みて拭き掃除
目白きて紅き椿にさかしまに
釈迦堂の春日の塀を牛車
いづくより茶色の蝶の湧きいでし
見上げゐて風渡りゆく花辛夷
花衣ぬぎてたたみてトランクに
かくれ住む人訪ねたし花の雨
花の宿行き過ぎければ寄らで行く
花の旅ここでしまひや土産もの
夜桜のどよめきあとに遠く来し
夜桜をもどりし門の大桜
菜の花や遠くて高き寺の屋根
状受は広告ばかり春の蝶
行春の庭に牡丹は風雨かな
鍬先の石に当りて梅の花
梅白しまことに白く新しく
うち仰ぐ空は真青で実朝忌
少年の夢多し陽炎うて道遠し
堂前の大山桜灌仏会
たまたまの家に在る日の庭つつじ
東風の波がぶりがぶりと杭を越え
時刻ききて帰りゆく子や春の風