泥つけし土筆のはかまいく重ね
灯してうき立ち見ゆるひひなかな
亭に入る雪解しづくのせはしさに
雪どけの水流れ入る菖蒲の芽
堆くつまれよごれぬ春の雪
近づけば大きな木瓜の花となる
口ごたへすまじと思ふ木瓜の花
あふぎゐる雲雀の空のかげりきぬ
擬宝珠の芽一つ一つのするどさよ
芍薬の芽のほぐれたる明るさよ
たほれゐる木も根をはりて芽ぐみをり
連翹の一枝づつの花ざかり
連翹に近き日南の干蒲団
河原まで土筆すみれと摘みながら
蕾まだ中々多し糸桜
春水に開けはづされし障子かな
山裾に舟よせて見る花の山
屋根舟の庇のしたの花の山
日当りて花の時雨の明るさよ
花を見る床几のそばの壺すみれ
からたちの垣縫うて行く落花かな
拾ひあげまだぬれてゐる桜貝
水兵や大海棠をひとめぐり
海棠に群がりとべる白き蝶
鶯も飼ひしんしばりして居りぬ