あの月をとつてくれろと泣子哉
朝露に浄土参りのけいこ哉
裸児と烏とさはぐ野分哉
膳先は葎雫や野分吹
腹の上に字を書ならふ夜永哉
あばら骨なでじとすれど夜寒哉
山雰のさつさと抜る座敷哉
秋風に歩行て迯る蛍哉
橋杭や泥にまぶれしきりぎりす
親に似た御皃見出して秋の暮
長き夜や心の鬼が身を責る
汁鍋にむしり込だり菊の花
かな釘のやうな手足を秋の風
迯しなに足ばし折なきりぎりす
ボンボリにはつしとあたる木実哉
木兎が杭にちよんぼり夜寒哉
けふ迄はまめで鳴たよきりぎりす
秋風や櫛の歯を引くおく道者
おれが坐もどこぞにたのむ仏達
夕やけや人の中より秋が立
ふんどしに笛つつさして星迎
六十に二ツふみ込む夜寒哉
寝た犬にふはとかぶさる一葉哉