秋雨のこぼれ安さよ片山家
年よりや月を見るにもナムアミダ
かつしかや月さす家は下水端
鴈鳴や旅寝の空の目にうかぶ
蛬きりきり死もせざりけり
蛬なけとてもやす芦火哉
ひやうひやうと瓢の風も九月哉
鴫立て畠の馬のあくび哉
どの星の下が我家ぞ秋の風
萩の葉を咥へて寝たる鹿子哉
ほちやほちやと藪蕣の咲にけり
彦星のにこにこ見ゆる木間哉
白露に気の付年と成にけり
秋立や木づたふ雨の首筋に
焼柱転げたなりに秋の風
笠紐にはや秋風の立日哉
秋の風人のかほより吹そむる
ぼろぼろが妻もうもれし木槿咲
煤くさき畳も月の夜也けり
蛤の汁かけ薄穂に出ぬ
せい出して山湯のけぶる野分哉
柴栗や馬のばりしてうつくしき
あさぢふや人はくつさめ鴈は鳴
鶏の小首を曲る夜寒哉
風吹てそれから鴈の鳴にけり