和歌と俳句

秋の暮

かれ朶に烏とまりけり秋の暮 芭蕉

愚案ずるに冥途もかくや秋の暮 芭蕉

しにもせぬ旅寝の果よ秋の暮 芭蕉

こちらむけ我もさびしき秋の暮 芭蕉

此道や行人なしに秋の暮 芭蕉

むかしやら今やらうつつ秋のくれ 鬼貫

唐崎へ雀のこもる秋のくれ 其角

巻つくす枕絵甘し秋のくれ 北枝

さびしさのどこまで広く秋のくれ 土芳

みみたててうさぎもなにと秋の暮 千代女

蚊の声の誰尋ねてか秋の暮 也有

我が手にわれをまねくや秋のくれ 蕪村

父母のことのみおもふ秋のくれ 蕪村

あちらむきに鴫も立たり秋の暮 蕪村

門を出れば我も行人秋のくれ 蕪村

門を出て故人にあひぬ秋のくれ 蕪村

弓取に哥とはれけり秋の暮 蕪村

去年より又さびしひぞ秋の暮 蕪村

訓読の経をよすがや秋の暮 蕪村

さびしさのうれしくも有秋の暮 蕪村

秋の暮辻の地蔵に油さす 蕪村

ひとは何に化るかもしらじ秋のくれ 蕪村

燈ともせと云ひつゝ出るや秋の暮 蕪村

鳥さしの西へ過けり秋の暮

限りある命のひまや秋の暮 蕪村

一人来て一人をとふや秋の暮 蕪村

有侘て酒の稽古やあきの暮 太祇

ひとり居や足の湯湧す秋のくれ 太祇

犬蓼の節をれしたり秋の暮 暁台

人の上に烟かゝれりあきの暮 暁台

象潟やいのちうれしき秋のくれ 暁台

加茂の町楽も聞えず秋の暮 召波

婚礼の家を出ればあきの暮 召波

戸口より人影さしぬ秋の暮 青蘿

鶴おりてひとに見らるゝ秋のくれ 白雄

大寺や素湯のにへたつ秋のくれ 白雄

手招きは人の父也秋の暮 一茶

又人にかけ抜れけり秋の暮 一茶

死神により残されて秋の暮 一茶

親に似た御皃見出して秋の暮 一茶

むさしのへ投げ出す足や秋の暮 一茶

青空に指で字を書く秋の暮 一茶

追分の一里手前の秋の暮 一茶

知た名のらく書見えて秋の暮 一茶