和歌と俳句

加藤暁台

石山やのどかに出る秋の月

さをしかの角にかけてや峯の月

月見して余り悲しき山の上

けふの月橘色に出る夜ぞ

月ひとり荒海をすゝむ今宵哉

中天をいざよひの月の出かけ哉

早稲の香や藪を一重の昼談議

道のべやいなごつるみす穂のなびき

月よしと小梛をのぼるいなご

秋の雨深草の町に行かゝり

あきの雨胡弓の糸になく夜哉

秋の雨ほね迄しみしぬれ扇

高根はれて裏行月のひかり哉

小墾田のをはりの初穂かくもあれ

我きけばをはり田をさす雁ならし

雨くらき夜のしら根をわたる

道くれて稲のさかりぞちからなる

帰り来れば浅田の早稲田穂にみゆる

稲の香のねざめて近し五位の声

唐崎の松に日ざしや秋の雨

あきの夜やそろりと覗く君が門

をとめ子が御衣打らし神の石

西谷の衣うつ夜や焙り芋

柿の渋ぬける夜冴や遠碪

打てつれなき人を責るかな