霞日も又初冬のやうすかな
冬の日のさし入松の匂ひ哉
鳩の巣のあらはなるよりしぐれそめ
鱗のこ ゝろはふかしはつしぐれ
一むらの烟はなれて行時雨
鐘の音やしぐれ降行あとのやま
霜冴て雀ひそかに鳴夜哉
霜満る夜た ゞ樟の匂ひかな
霜枯て鳶の居る野の朝ぐもり
行燈に薬鑵釣りたる霜夜哉
目じるしの枯木たふれて霜の月
木がらしにむかひかねたり辻謡
凩や木から落たる猿の尻
海の音一日遠き小春哉
住の江や一もと草のわすればな
茶の花に兎の耳のさはる哉
ちやのはなや雲雀鳴日もあれば有
冬の夜や暁かけて山おろし
月寒く出る夜竹のひかり哉
冴きつて檜裂たり冬の月
砂に埋須磨の小家や冬の月
寒月の額にちかしをとこ山
屋根うらに鼠鳴夜の雨寒し
さむそらやた ゞ暁の峯の松
山寒し出るより入日のあした
辻能の矢声もかる ゝ寒さ哉
汐風の吹よわるかたや冬紅葉
霜にぬれてもみぢ葉かづく小雀哉
めづらしや今朝みる雪の下紅葉