風はやく二ツにわれてむらちどり
月も見え雪も降出てなく鵆
水鳥やさすがに雨をうちそむき
水とりの立行程や淀の松
しのびねに鳴夜もあらん離れ鴛
暁の山を越え来てうきね鳥
かひつぶり浮出まで見て過ぬ
今はなき身をもて鰒のいかり哉
身をま ゝに沈めかねたり河豚の腹
くらきよりくらきに帰るなまこかな
春日野の片端麦を蒔そめぬ
寒鳥の日を追入ぬあだ ゝらね
煩悩の犬にかまれなはち叩
愚に帰る暁ごゑや鉢た ゝき
人をさへなつかし気なり雪のしか
暁や榾焼そへる山おろし
親と子のうき世やかたるほたの影
寒菊に南天の実のこぼれけり
かんぎくや更に花なきはなの後
水仙やうき世小路の玉すだれ
不破の雪さながら昼の色ならず
さくさくと粟搗師走月夜哉
おもひ出していふ事なかれ年わすれ
とし忘れけふ白髪の仲ま入
歳の暮隠者かたぎの耻かしき