和歌と俳句

加藤暁台

新茶古茶夢一とせをかたる日ぞ

更衣いきたうなりし隅田川

かへをしの衣や苔の露じめり

時鳥なき行夜半の一かすみ

かつしかに行てきかばや郭公

蜀魂古巣は泊瀬かみよしのか

十日ほど淡路をさらず郭公

橘やまたうへもなきほとゝぎす

閑こどり我行方へなきうつり

草ほこやゆふ越えゆけばかんこ鳥

華暮て月を抱けり白ぼたん

露たかき麦の見こしや芥子の花

しら芥子に焚火移ふや嵯峨の町

汐かぜや砂ふきか ゝるけしの花

むかし女はらからすめり杜若

かきつばた穂麦の髭に立ならび

芍薬やはきもの失る水駅

芍薬に甕すゑたる旅路かな

卯の花の草にか ゝれりにはか水

うのはなの中行蓑のしづく哉

花御堂売僧が工凡ならず

みじか夜や人現なき茶師が許

又嬉しけふの寐覚ははつ鰹

鰹よぶ浪よあらしよ屋かた舟

下々の下のかざしもあふひ祭かな