たのみなき角としおもへ蝸牛
おもひ得たり竹三竿にかたつむり
かづらきの皇子よりや奥の田植うた
つらりつらりうゑ田の縁の百からす
鳩の巣に吹とらる ゝな田うゑがさ
あぢさゐやよれば蚊の鳴花のうら
葩を葉におく風の蓮かな
草あらふ流の末や苔しみづ
汲てしれ命にかゝる苔清水
此奥に聖おはしぬ苔の花
桐のはな寺は桂の里はづれ
山本や鹿の子迷はす鵜のかゞり
はなれ鵜の火を得さらぬも泪かな
鞍つぼに酒吸ふ門やかきの花
鮓うりのかざしにとれや花樗
漉水の雫かすりてはなおほち
ゆふがほの花立されよ夜の蝿
ゆふがほのはなをちからや木曽の奥
初うりやまづ畑ぬしの茶振舞
夕立や一棹岸へたらぬ舟
六月の埋火ひとつ静なり
草の戸や柳すかして夕すゞみ