和歌と俳句

加藤暁台

日ぐらしの今朝しも鳴ぬ秋は来ぬ

鶯の浅茅がくれや今朝の秋

けふといひし秋は今宵の五位の声

うつせみの現に秋をしる日かな

萩桔梗星に貸べく野は成ぬ

江にそふて流る ゝ影や銀河

戯にあふぎながさむほし迎

羅の袖や裂らむわかれ星

星の精や八日にさける白芙蓉

艸まくら故郷の人の盆会かな

たま棚にくさのゆふべのけぶりかな

美しや月の中なる盆の人

送り火やなきは誠の跡座敷

魂送り身にそふくさの夕かな

静さや町なき里の高燈籠

おもひきつて出れば出すますをどり哉

秋の風三井の鐘よりふきおこる

秋かぜの吹につけても長等山

巣に籠る蟻のいそぎやあきの風

猪垣のむすびめきれて秋の風

切角と野分追ゐる旅ね哉

鉦の緒にいなづまつかむゆふべ哉

けふは我翌は庵なき露のはな