もとの露すゑのしづくや花木槿
二日咲木槿となりてあさ寒し
白木槿糸瓜の中に咲にけり
柳ちるや少し夕の日のよわり
秋かぜをかづきてふせり女郎花
をみなへしあやうき岸の額かな
蕣はいなづまに見る莟かな
あさがほの花はぢけたりはなひとつ
月草の色見えそめて雨寒し
月くさは露もてはなをくゝるかな
きりこめて那須野狩野の犬の声
うつり行日に衰へて夜は長し
かはる夜や心寄せなき秋のくも
かぜなりやうち返る萩のほの白し
小比丘尼の折て捨行野萩哉
桔梗咲て何れも花のいそぎかな
夕闇を静まりかへるすゝき哉
蛇のきぬかけしすゝきのみだれ哉
村をばな夕越えゆけば人呼ふ
を花散や鬢の毛を吹風の筋
つたの葉の水に引るゝやま辺かな
垣のつた濡重りぬへちまの葉
ひぐらしや明るき方へ鳴うつり
蜩のなけばひさごの花落ぬ
声しみじみ浮世に遠し秋の蝉