秋風におくれて吹や秋の風
白露や茨の刺にひとつづつ
茨野や夜はうつくしき虫の声
虫売のかごとがましき朝寝哉
物焚て花火に遠きかがり舟
欠々て月もなくなる夜寒哉
手燭して能ふとん出す夜寒哉
壁隣ものごとつかす夜寒哉
あちらむきに鴫も立たり秋の暮
きくの露受て硯のいのち哉
朝霧や村千軒の市の音
人を取淵はかしこか霧の中
角文字のいざ月もよし牛祭
雨乞の小町が果やおとし水
村々の寝ごころ更けぬ落し水
足あとのなき田わびしや落し水
竜王へ雨を戻すやおとし水
山鳥の枝踏かゆる夜長かな
田におちて田を落行や秋の水
しら菊や庭に余りて畠まで
梶の葉を朗詠集の栞かな
稲妻や二折三折剣沢
八朔や扨明日よりは二日月
月更けて猫も杓子も踊かな