秋ふたつうきをますほの薄哉
山雀や榧の老木に寝にもどる
鵯のこぼし去りぬる実の赤き
蘭夕狐のくれし奇南をたかむ
しら露やさつ男の胸毛ぬるゝほど
蘭の香や菊よりくらき辺より
猪の露折かけてをみなへし
かけいねに鼠のすだく門田哉
下露の小はぎがもとや蓼の花
あだ花にかかる恥なし種ふくべ
葉に蔓にいとはれ皃や種瓢
落水田ごとのやみとなりにけり
旅人よ笠嶋かたれ雨の月
茨老すすき痩せ萩おぼつかな
弓取に哥とはれけり秋の暮
一行の鳫や端山に月を印す
沙魚釣の小舟漕ぐなる窓の前
秋雨や我菅簑はまだ濡らさじ
白萩を春わかちとるちぎり哉
金屏の羅は誰があきのかぜ
秋風や干魚かけたる濱庇
うき旅や萩の枝末の雨を踏
修理寮の雨にくれゆく木槿哉
綿つみやたばこの花を見て休む