みの虫や笠置の寺の麁朶の中
朝がほや手拭のはしの藍をかこつ
蘆の花漁翁が宿の煙飛ぶ
まんじゆさげ蘭に類ひて狐啼
栗備ふ恵心の作の弥陀仏
手燭して色失へる黄菊哉
鬼灯や清原の女が生写し
笠とれて面目もなきかゞしかな
追剥を弟子に剃りけり秋の旅
毛見の衆の舟さし下せ最上川
新米の坂田は早しもがみ河
ひとは何に化るかもしらじ秋のくれ
冬ちかし時雨の雲もこゝよりぞ
初秋や余所の灯見ゆる宵のほど
女郎花二もと折ぬけさの秋
三輪の田に頭巾着て居るかゞしかな
菊川に公家衆泊けり天の川
丸盆の椎にむかしの音聞む
三井寺や月の詩つくる踏落し
秋寒し藤太が鏑ひゞく時
洟たれて独碁をうつ夜寒かな
住むかたの秋の夜遠き灯影かな
村百戸菊なき門も見えぬ哉
花はいさ月にふしみの翁かな
月見舟きせるを落す浅瀬かな