名月や地に引替る天の川
名月や松にかゝれば松の花
筆とりて四隅にわかる月見哉
稲の香の満るを今宵月の雲
十六夜や闇かと見れば花すゝき
いざよひや芭蕉の上は皆月夜
秋の雨月に対して猶悲し
秋雨や一羽烏の帰るそら
ともし火に風打付るきぬた哉
此頃の銀河や落てそばの花
月を実にむすびやすらんそばの花
春秋と移る夢路や雁の声
羽音さへ聞えて寒し月の雁
粟の穂やひとほしづみて啼鶉
鹿の声高根の星にさゆるなり
角の上に暁の月や鹿の声
三日月にかいわるきくの莟哉
雨の菊かくれ過たるけしき哉
暁はまことの霜や後の月
後の月蕎麦に時雨の間もあらね
秋の日やうすくれなゐのむら尾花
既になき色を秋ふる尾花かな
鶏頭の黄なるも時を得たる哉
鶏頭や倒るゝ日迄色ふかし
戸口より人影さしぬ秋の暮